第5冊 5W1H思考(シンプルかつ本当に使えるフレームワーク)
本当に使える「フレームワーク」を手に入れよう
第5冊『シンプルに結果を出す人の5W1H思考』
- 読みやすさ ★★★☆☆
- 即効性 ★★★★★
- 影響力 ★★★★☆
- フレームワーク、使えてますか?
- 著者 渡邉 光太郎さんってどんな方?
- ① 「Big-Why」で課題の真の目的を突き詰める
- ② 「5W1H」で深く広く考える
- ③ 「Why-How」で説得力アップ!
- ④「3W1H」で課題解決の道筋を示す
フレームワーク、使えてますか?
世の中には、先人たちが開発された様々な素晴らしいフレームワークがあります。
PEST、5F、4P、3C、SWOT、バリューチェーン、PPM、AIDMAなどなど。これらのフレームワークを十分に活用できれば、今の仕事をもっとスムーズに効果的に行うことができるでしょう。
しかし、学んだものの実際に仕事に活用できている人はどのくらいいるのでしょうか?
どこで使用すれば良いかわからない。数が多くて混乱してしまう。フレームワーク自体が複雑で、覚えていられない。こんな悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
今回ご紹介するビジネス書5冊目『シンプルに結果を出す人の5W1H思考』は、そんな悩みを解決するフレームワークについて記載しています。それは、英語の授業でも習ったあの『5W1H』。フレームワークに疲れたあなたの悩みを解決してくれるかもしれません。
著者 渡邉 光太郎さんってどんな方?
本書籍の筆者である渡邉 光太郎さんは、東芝、大手シンクタンクなどでマーケティング、コンサルティングなどに従事。留学後は、MBA教育を手がけるグロービズで人材開発、組織変革のコンサルティング、講師活動等を実施。現在は、ランウィズ・パートナーズの代表を務めており、様々なコンサルティングに従事しています。
コンサルティングに長年従事されている渡邉さんがお勧めするフレームワーク『5W1H』とは一体?早速『シンプルに結果を出す人の5W1H思考』の中身を見ていきましょう。
① 「Big-Why」で課題の真の目的を突き詰める
課題解決を正しく行うには、「目的」を意識することが重要です。でも、ちょっと待ってください。その「目的」は表層的なものになっていないですか。
課題解決の成果をより大きなものにするために、真の目的「Big-Why」まで突き詰める「さかのぼり思考」が重要なのです。
Big-Why:どうありたいのか(真の目的)
Why:なぜやるのか(目的)
What/How:何をやるのか/どうやるのか(手段)
本書では、一例として「ペーパーレス運動」を取り上げています。
ペーパーレス運動の真の目的
Big-Why:外向き、顧客志向の風土作り
Why:無駄な社内業務プロセスや間接コストの削減
What/How:用紙代やコピー代など直接コストの削減
表層的な「Why」である無駄な間接コストの削減で思考が止まってしまい、ペーパーレス推進のための会議の新設などしていませんか?
ここでの真の目的「Big-Why」は「外向き、顧客志向の風土作り」であり、その一つの手段として「ペーパーレス運動」があるのです。「Big-Why」まで掘り下げることで、その課題を解決するために有効な施策が見えてきます。
施策例:営業マンの直行直帰徹底、社内ルーチンのアウトソース化など
「Big-Why」を突き詰める際は、以下の3つの視点を持ち、正しく深く突き詰めていきましょう。
3つの視点(3つの「あ」)
(1)ありかた(「やりかた」ではなく「ありかた」)
顧客を主語に、何を実現している状態かをしっかり把握することが重要です。「やりかた」ではなく、顧客のベネフィット視点で考える「ありかた」となっているか、スターバックスなどの例を持って説明しています。
スターバックスのBig-Why
やりかた:(自社が)コーヒーを店舗で販売
ありかた:(顧客が)心が豊かになる、特別な体験を提供
(2)ありがたみ(どんな「ありがたみ」?)
「ありがたみ」を、「顧客にとって、競合他社には提供できない、高いレベルの(よりうれしい)体験価値」と定義しています。顧客にとって、重要でわくわくする価値があるか、ライバルとは一線を画しているかといった「ありがたみ」をP&Gの10時間連続給水おむつを例に説明しています。
P&GのBig-Why
やりかた:最長10時間の連続給水が可能なおむつの提供
ありがたみ:赤ちゃんが快眠でき、”脳育眠”を導くおむつの提供
(3)あたらしみ(どんな「あたらしみ」?)
最後に「従来にない、革新的な意味づけ」が「あたらしみ」です。これまでにないものか、顧客の生活に革新的な価値を創造するかといった視点であり、アイロボット社のルンバを一例にあげています。
アイロボットのBig-Why
これまで:自分で掃除をきれいにするための掃除機の機能向上
あたらしみ:自分で掃除をしなくて良い掃除機の提供
② 「5W1H」で深く広く考える
Big-Whyをしっかり把握したら、次は企画や報告に実際の業務に移る必要があります。
そこで「5W1H」が「俯瞰の枠組み」「発想視野拡大のテコ」として、力を発揮します。
会議の実施概要を作成する際、しっかり考えているようで重要なことが抜けてしまうことはないですか?そんな抜け・漏れを防ぐのが5W1Hです。
会議実施要領を作成する際に、下記の要領で5W1Hを活用すれば抜け・漏れが防げます。
会議概要
Why:目的、ゴール(成果)は?
What:テーマは?
When:開催時期・頻度は?
Where:開催場所は?
Who(m):参加メンバーは?
How:進め方や準備、作業分担は?
How much:予算(費用負担)
会議の実施要領が決まったら、次は議論の内容を決めます。ここでも以下のように5W1Hを活用することで、より深い議論が可能になります。
議論内容
Why:目的、ゴール(成果)は?
When:期限や期間は?
Who(m):どの市場・顧客を狙う?
What:どの商品、どんな価値提供?
Where:どのチャネル?
How:どんなプロモーション?
How much:どれくらいの価格?
次に5W1Hを使いこなすコツとして、2つのポイントを挙げています。
5W1H活用上の2つのポイント
(1)5W1Hを柔軟な問いに落とし込む
5W1Hの問いをより具体的な問いへと言い換えます。Whenなら「いつ?」を頻度、スピード、スケジュールなどに、Whereなら「どこで?」を場所、市場、販売チャネルなどに落とし込むことで、より具体的な思考が可能になります。
(2)問いを有効に組み合わせる
正しく発想を広げるために、柔軟な問いを有効に組み合わせる必要があります。組み合わせ方により、5W1Hの内容が変わるのは、前記の「会議概要」と「議論内容」の違いからもお分かりいただけると思います。
基本的な5W1Hの活用方法が分かったら、次はさらに思考を広げていきます。
「モアベター」から更に一歩踏み込んだ「イノベーション」になるように、5W1Hでこれまでの視点を新しい視点に置き換えます。ここでは、「エキナカ」を一つの例に説明しています。
「エキナカ」に見る5W1Hの活用
従来の駅構内
When:短時間(電車が来るまで)
Who:電車を利用して移動したい人
When:長時間(エキナカを楽しむ)
Where:移動者に限らず、あらゆる人々
このように、5W1Hの現状を把握し、Whenの営業時間(昼営業⇔夜営業)、Whoの世代(若者⇔シニア)など、視点を変えることで、これまで気づかなかった切り口に気づくことができるのです。
③ 「Why-How」で説得力アップ!
仕事の中では、上司や折衝先に、説得、つまり「相手に何らかの行動を促す」ことが重要になります。説得のカギは、「相手の立場になって、その疑問や懸念を踏まえた論点に答えること」です。この説得で有効なのが「Why-Howのピラミッド」です。これは、「〇〇をすべきだ」ということを人に説得するために、納得してもらうためのWhy(なぜ〇〇なのか?)、動いてもらうためのHow(どのように〇〇するのか?)を用意するというものです。
ここで相手が説得を受諾しない理由「行動のボトルネック」を把握するために、「Why-How」のWhyを分解します。
Why-What:なぜ(他のものではなく)これなのか?
Why-Who:なぜ(他の人ではなく)私なのか?
Why-When:なぜ(他の時ではなく)今なのか?
これらの視点に「How」を加え、それぞれ根拠データや事実談を交え、説得することで、相手の「行動スイッチ」を的確に押すことができるのです。この「行動・変革促進の説得ロジック」は、個人だけでなく組織に変革を促したいときも有効です。
次に「戦略プランの説得ロジック」について触れていきます。これは行動・変革と同じような考え方ですが、5W1Hの問いの部分が少し異なります。
「〇〇市場(事業)に参入すべきだ」という戦略への問いは、Why(なぜその市場か?)とHow(どのように戦うのか?)に分けられます。さらにこの戦略をやる意義を根拠付けるためにWhyとHowを掘り下げます。
Why-Where:どこで戦うのか?
Why-Who:誰を狙うのか?
How-What:何をもって勝つのか?
How-When:いつ展開するのか?
How-5W2H:具体的にどうやるのか?
これらの視点に答えを用意することで、3C+4Pなどのフレームワークでも見落としがちな視点も網羅した説得が可能になるのです。
④「3W1H」で課題解決の道筋を示す
最後に、複雑なビジネス課題を効率的に解決する思考プロセスを生み出す5W1Hの活用方法に触れています。
見当違いの解決法を導き出す「決め打ち」や総花的に非効率的な解決法を導き出す「むだ打ち」を避け、「3W1H」により有効な課題解決を行います。
どんな枠組みやプロセスで、その問題に取り組むか。それが「3W1Hのステップ」です。
3W1Hのステップ
What:問題の設定(何を解決するのか?)
「あるべき姿(目標)」と「現状」のギャップを把握します。ここでも5W1Hそれぞれの視点で「目標」と「現状」を洗い出し、ギャップが生じているところを突き止めます。その際に、注意が必要なのは、「正解は1つではない」ことです。たとえば長期、中期、短期の視点に立つと、それぞれで解決すべき課題は異なってくるため、意志を持って、どの目標を達成するのか決める必要があるのです。
↓
Where:問題箇所の特定(どこが悪いのか?)
次に問題箇所を5W1Hを使い特定します。
What(物の視点)、Who(人の視点)、When(時間の視点)、Where(場所の視点)、How much(数式の視点)を組み合わせ、より具体的な問題点を洗い出します。本書の例では、黒酢飲料の年間売上高が伸びないのは、「50歳以上の女性の注文回数」が他の層と比べ格段に低いことが問題なのではとの仮説にまで踏み込んでいます。
↓
Why:問題原因の究明(なぜ起きるのか?)
問題箇所が特定できたら、次は「なぜそれが起きるのか?」を究明します。つまり、「顧客がこういう状態(あるべき姿)になっていない」から問題が起きている、と考えるのです。その際は、心理・行動プロセスに沿って、まずは「顧客の立場」に立った要因のリストアップを、その後「自社の立場」から、より効果的な問題原因を突き止めます。
↓
How:解決策の立案(どうすれば良いのか?)
正しい問題原因が分かっていれば、もう解決策の方向性は見えているはずです。
5W1Hから3つ程度を選んで、解決方法を複数リストアップしていきます。
例:「When:示すタイミング」「What:提供するツールやシステム」「How:伝える媒体」
最後に複数の解決策の中から、「効果」「コスト」「実現スピード」「実現可能性」「自社の強みの活用度合い」「リスク」などの中から判断基準を示し、もっとも有効な解決策を選定します。あとは実行に移すだけです。